子どもにあげていて損のない薬
「小建中湯」は「大建中湯」と比較し、お腹を温める力がおだやかであることにより「小」がつけられたのですが、「小児のお中を建てる薬」と理解してよいと思います。
体力の弱い人が、あまり強くない風邪にかかると、寒気があるのに汗をかいている状態となります。
そのような時に有名な葛根湯を飲むと、なおさら汗をかいてしまい、体力を消耗させてしまいます。
皮膚の汗のかき方を調節して、結果的には体温を正常にするのが「桂枝湯」という漢方薬です。
この「桂枝湯」に芍薬を増やしたものが「桂枝加芍薬湯」と言って、腹痛・下痢に使う漢方薬です。
この「桂枝加芍薬湯」に麦芽糖(膠飴)を加えたものが「小建中湯」で「桂枝加芍薬湯」に滋養・排便の調節・筋肉の緊張を緩める作用を強めたものです。
1日分の膠飴の量は、日本では20g・中国では60gとされています。
この膠飴は、出来上がった煎じ液の中に溶かし込むことになっていますので、一日分は膠飴だけでも結構な量になるはずで、一日分が10g程度のエキス剤には入りきらないわけで、エキス製剤メーカーが困っているところです。
そこで煎じ液に近づける為に、「桂枝加芍薬湯」のエキスを水あめを溶かし込んだ湯で服用する方法がとられています。
製薬メーカーの努力で、手軽に服用できるエキス剤は煎じ薬と同等となってきていますが、この小建中湯だけは、煎じ薬を使ってもらいたいと思っております。
「子どもに、あげていて損のない薬」として、お腹を強くする「小建中湯」と風邪をひき難くする「柴胡清肝湯」・乾布摩擦があげられます。
胃腸が弱く神経過敏だと、腹筋が消化器を守ろうと硬くします。
しかしもっと進むと、その力もなくなってしまうため、腹筋がフニャフニャになってしまいます。
薬局に来店される方だと腹筋が硬くなっている人が多いようです。
腹筋が硬くなると、上向きに寝ると腹が張ってしまうので、うつぶせに寝たり、腹巻のようなもので腹を押さえると楽になります。
また胃袋が押さえられていれば、すぐ満腹になってしまい小食になりますが、すぐ空腹になり、また食べたくなるので間食が多くなります。
膀胱が圧迫されていれば小便もすぐ行きたくなってしまいます。
腸が圧迫されれば、腸の蠕動運動が抑制され、食べ物がゆっくり動くので、便の水分が吸収されすぎて、兎の糞のようにカサカサの細切れ状になってしまいます。
外部からの冷えや食べ物による冷えで筋肉はもっと硬くなるので、症状は重たくなります。
また私達の体がまっすぐ立っていられるのは、背骨を取り囲む筋肉が正月の出初式のはしごりのように前後左右から引っ張っているからですが、腹直筋が異常に硬くなると、それに見合った背筋がなくてはならないわけです。
背筋が耐えられなくなって起きる腰痛にも小建中湯を使うことがあります。
腹筋を過敏にさせないために、力を抜く体操を勧めます。
朝ぐずぐずしていて、腹が張ったり、腹が痛んだり、トイレで大便がすっきり出ないため時間がかかってしまったり、気になってまたトイレに行く、途中まで行って大便がしたくなって家に戻ってきてしまう。
このような登校拒否児に使って喜ばれたことがあります。
その子は、上記の小建中湯の説明をしたところ、3日目にニコニコ顔でやってきて続きを購入しに来られました。
母親が言うには「ここの叔父さんだけが、僕のことを分かってくれた」ともらしたのだそうです。
薬剤師になっていて良かったとうれしくなりました。
ミカミ薬局